木の家の魅力は、手触りや香り、落ち着く空気感だけではありません。
長く安心して住めるかどうかは、意外と見えにくいポイントで差がつくことがあります。
その一つが、木がどれだけ水分を含んでいるかを示す「木材の含水率」です。
含水率が高い材を使うと、建てたあとに乾きながら収縮し、反りや割れが出やすくなります。
その結果、建具が引っかかったり床が鳴ったり、壁にすき間が出たりと、暮らしの中でちょっとしたストレスが増えていくこともあります。
昔の家のように、そのうち乾くと考えにくいのは、いまの住宅が気密性を高めていて木の乾燥が自然任せになりにくいからです。
本記事では、含水率の基本から未乾燥材と乾燥材(KD材)の違い、部位ごとの目安、割れの見分け方、無垢材と集成材の考え方まで、家づくりに役立つ形でわかりやすく整理します。
木の家の盲点は「含水率」

含水率は、木材を点数で評価するための数字ではなく、建てたあとに起きやすいトラブルを避けるために先回りして確認しておきたい目安です。
ここでは、含水率が家づくりのどこに影響するのかを押さえていきます。
耐久性に効く理由
家の耐久性は、木材の強度だけでなく「湿った状態がどれだけ続くか」にも左右されます。
木を腐らせる菌は、水分がある環境で活動しやすいため、木材が高含水のまま長く留まるほど不利になりやすいからです。
また、木は乾燥が進むほど強度が安定しやすい一方、乾く途中では収縮や割れが起こりやすくなります。
構造材が建てたあとに大きく動けば、接合部や周辺部材に負担がかかり家全体の精度にも影響が出ます。
含水率は、耐久性の土台に関わる要素として見ておくと安心です。
住み心地に出る理由
含水率の影響は、傷みが目立つ前に日々の使い勝手として現れやすい傾向があります。
木が乾きながら少しずつ収縮したりねじれたりすることで、住み始めてからの調整が必要になる場面が増えることもあります。
もちろん、木の家は季節で多少動くものです。
ただ、含水率が安定した材を選び現場で濡らさないように施工できれば、動きの幅を抑えやすくなります。
その結果、調整の手間や気になる点を減らしやすくできるのです。
迷わない3つの判断軸
含水率は数字だけで判断しようとすると迷いやすいので、次のような3つの軸で整理しておくとわかりやすいです。
- 数値(目安):構造材と内装材で目安が違うことを押さえる
- 乾燥(材の状態):未乾燥材か乾燥材(KD材)かで建てたあとの動き方が変わる
- 管理(現場の扱い):乾燥材でも濡れれば含水率が戻るため保管や雨養生などの運用が重要
この3つの軸を押さえたうえで、次は「木が乾くと何が起きるのか」をしくみとして確認しておきましょう。
含水率のしくみを押さえる

含水率は、細かい数値を覚えるよりも「木が乾くと何が変わるのか」を把握しておくことが大切です。
ここでは、含水率の意味と家づくりで差が出やすいポイントを押さえておきましょう。
含水率とは?
含水率は、木材がどれだけ水分を含んでいるかを割合で表したものです。
伐採したばかりの木は水分が多く、乾燥が進むにつれて水分が抜けて重さや寸法、硬さが変わっていきます。
家づくりで重要なのは、木は「乾く過程で動く」という点です。
乾いて落ち着いた材は安定しやすい一方、乾き途中の材は収縮やねじれが出やすくなります。
含水率は、木材の状態を把握するための目安として役立つのです。
30%を境に何が変わるか
木の中の水分は、大きく分けると「すき間にある水分」と「細胞の壁にしみ込んだ水分」の2種類として捉えられます。
含水率30%前後は、木の内部で「抜けていく水分の種類」が切り替わる目安です。
ここを境に、寸法の変化がはっきり出やすくなります。
30%を下回ると木は締まって強くなる一方、縮みも目立ってきます。
そして乾燥が建てたあとまで持ち越されると、その縮みが不具合につながりやすくなってしまいます。
そういったことから、家づくりでは縮みを「材料の段階で済ませておく」ことがポイントになります。
高含水のリスク
含水率が高い材をそのまま使うと、建てたあとに乾きながら収縮し、反りや割れが出やすくなります。
こうした動きは仕上げや建具の調整に影響し、住み始めてからの手直しが増える要因になりがちです。
さらに、湿った状態が長く続けばカビや腐朽のリスクも高まりやすくなります。
耐久性は含水率だけで決まるものではありませんが、材料の状態が整っているほど防水や換気など他の対策も効果を発揮しやすくなります。
未乾燥材と乾燥材(KD材)の違い

家づくりにおける含水率のポイントは、乾燥が「材料の段階で済んでいるか」、それとも「建てたあとに進むか」です。
この違いで、仕上がりの安定性や手直しの出やすさが変わってきます。
未乾燥材の注意点
未乾燥材(グリーン材)は、製材後に十分な乾燥工程を経ていない木材です。
含水率が高めの状態で使われるため、建てたあとに乾燥が進み、収縮やねじれが出やすくなります。
木の家に多少の動きはつきものとはいえ、乾燥が大きく進むとその動きが仕上げや建具に影響しやすいです。
壁の取り合いが切れたり建具の調整が必要になったりと、住み始めてから気になる場面が増えることがあります。
乾燥材のメリットと見方
KD材は、乾燥工程であらかじめ木を動かしてから使うイメージです。
建てたあとに進む収縮を減らしやすく、仕上げや建具の調整が必要になる場面も抑えやすくなります。
住宅会社が「構造材はKD材を標準」と説明している場合、少なくとも乾燥工程を前提にしている点は安心要素の一つと考えて良いでしょう。
ただ、「KD材」という言葉だけで安心しきるのは避けたいところです。
乾燥の方法や管理の基準は製品や流通で差が出ることもあるので、現場に届いてからどう扱うかまで含めて見ておくと判断しやすいでしょう。
現場で濡れるリスク
乾燥材は乾いた状態で届く木材ですが、放っておけばその状態が保たれるわけではありません。
雨に当たる、湿った場所に置かれる、養生が不十分なまま上棟を迎えるなどの条件が重なると、木材は水分を吸って含水率が上がることがあります。
つまり、乾燥材を使っていても、現場での保管や雨養生が雑だとメリットが薄れてしまうということです。
ここが、カタログの記載だけでは判断しにくい部分です。
住宅会社を比較するときは、「KD材を使っていますか?」だけで終わらせず、「搬入後はどう保管するか」「雨の日はどう対応するか」まで聞いておくと、会社の管理姿勢が見えやすくなります。
住宅会社に聞く3つの軸チェックリスト
ここまでを踏まえると、住宅会社の説明は「数値」「乾燥」「管理」の3点に分けて聞くと整理しやすくなります。
- 数値:構造材・内装材の目安は?(どの基準で見ている?)
- 乾燥:未乾燥材/KD材の比率は?乾燥の説明は?
- 管理:搬入後の保管は?雨天時のルールは?測定や記録は?
この3点がスムーズに答えられる会社は、材料と現場管理をセットで考えている可能性が高いと言えます。
逆に、言葉だけが先に立つ場合は、もう一段だけ具体例を聞いておくと判断しやすくなるでしょう。
部位別の適正含水率を整理

含水率は「低ければ低いほど良い」と言い切れるものではなく、使う場所に合わせて考えるのが基本です。
構造材と内装材では、求められる安定性も影響が出るポイントも違います。
ここでは部位ごとの目安を整理していきます。
環境で変わる平衡含水率
木材は、空気中の湿度に合わせて水分を吸ったり吐いたりします。
乾燥材であっても、周囲が湿っていれば水分を吸いやすく、乾いていれば水分を放出しやすいです。
つまり含水率は、材料の状態だけでなく置かれる環境にも左右されます。
このため家づくりでは、数字を一点で固定して考えるより「その部位が置かれる環境で、どの程度まで動く可能性があるか」を見ておくことが大切になります。
木材は周囲の湿度とつり合う水分量に近づいていきますが、これを「平衡含水率」と呼びます。
日本の住環境では、屋外でおよそ15%前後、冷暖房の効いた室内では10%前後まで下がることもあります。
構造材の目安
柱・梁・土台などの構造材は、家の骨組みとして長期にわたり荷重を受けます。
ここで含水率が高いままだと、建てたあとに乾燥収縮が進み、接合部や仕上げに影響が出やすくなります。
乾燥の度合いは、JASの区分で「SD20(含水率20%以下)」や「SD15(含水率15%以下)」のように整理されています。
目安としては、構造材はSD20相当を最低ラインに考えると判断しやすいでしょう。
SD20(20%以下)なら寸法変化が大きく出にくくなり、湿った状態が長く続くリスクも下げやすくなります。
もちろん最終的には、木材の品質だけでなく「濡らさない施工」や「水が入りにくい納まり」とセットで考えることが前提です。
内装材の目安
フローリングや造作家具などの内装材は、構造材以上に「見た目」と「触れたときの違和感」が出やすい部分です。
室内は冷暖房の影響で乾湿差が生まれやすく、木の動きが仕上げに現れやすくなります。
そのため内装材は、より乾燥した状態を前提に含水率15%以下を目安にしておくと安心です。
とくにフローリングや造作の板材は、室内の乾燥に合わせて10%前後まで落ち着くこともあります。
内装材は、構造材以上に動かない前提で乾燥状態を見ておくと安心です。
部位別目安表
ここまでの話を数字だけで覚えようとすると混乱しやすいので、部位ごとの目安を一覧でまとめて整理してみます。
| 使う場所 | 目安(含水率) | 気になりやすい点 |
|---|---|---|
| 構造材(柱・梁・土台) | 20%以下 | 乾燥収縮が建てたあとに進みやすい |
| 内装材(床・造作・家具) | 15%以下(場合により10%前後) | すき間・反りが見た目に出やすい |
目安は材料や会社の基準で前後します。
乾燥材かどうか、現場で濡らさない管理ができているかも合わせて確認するのがコツです。
割れ・反りを正しく理解する

家づくりの相談でよく出るのが「柱に割れがあるけど大丈夫?」という不安です。
しかし、割れには、木の性質として起こりやすいものと注意したいものがあります。
見た目だけで一喜一憂しないために、まずは割れの種類と見分け方を整理しておきましょう。
背割り
無垢の柱などで見かける「背割り」は、木の乾燥で起こる割れを一箇所に集めるための加工です。
木は乾くと縮もうとしますが、その力がバラバラにかかると表に不規則な割れが出やすくなります。
背割りは、あらかじめ切れ目を入れて割れの出口を作り、他の面をきれいに保ちやすくする考え方です。
背割りがあるから危ないというより、木の動きを前提にした納まりの一つと捉えると分かりやすいでしょう。
干割れ
乾燥材であっても、表面に細いひび割れ(干割れ)が入ることがあります。
これは乾燥で表面が先に縮み、内部との動きに差が出ることで起こるものです。
見た目は驚きますが、浅い干割れは乾燥している証拠として出ることもあるため、割れがある=不良品、と決めつけないことが大切です。
乾燥による自然な割れであれば、慌てて評価を下げる必要はないケースもあります。
木の家では起こり得る現象として落ち着いて見ておくと安心です。
注意すべき割れ
注意したいのは、割れが深く構造上の要所にかかっている場合です。
例えば、欠き込み(切り欠き)や金物の近くに割れが集中している、節の周りから大きく裂けている、明らかに広がっている、といったケースは確認しておきたいポイントになります。
また、反りやねじれが大きく出ている場合も、仕上げや建具に影響が出やすいので、施工側に理由と対応方針を聞いておくと安心です。
「自然な割れ」と「見逃したくない割れ」を分けて見られるようになると、必要以上に不安にならずに済みます。
割れの見方ミニ表
現場や内覧で迷ったときには、以下の表で整理してみてください。
| 見え方 | まず考えたいこと | 次のアクション |
|---|---|---|
| 背割り(一直線の切れ目) | 割れを逃がす加工のことが多い | 仕様としての説明を確認 |
| 表面の細い干割れ | 乾燥で起こり得る | 深さ・広がりをチェック |
| 深い割れ/要所に集中 | 欠き込み・金物付近は要確認 | 理由と対応方針を聞く |
最終判断は部材の位置や深さで変わります。
気になる場合は、写真を撮って施工側に「理由」と「対応方針」をセットで確認するのが安心でしょう。
無垢材と集成材の違い

無垢材か集成材かは、家づくりで悩みやすいところです。
木の表情や質感を優先するのか、それとも寸法の安定や管理のしやすさを優先するのかで、選び方は変わってきます。
含水率の面では、「状態のばらつき」と「乾燥に伴う動き」を意識しておくと判断がぶれにくくなります。
無垢材
無垢材は、一本の木をそのまま製材して使う木材です。
木目の表情や香り、手触りといった自然の「木らしさ」を楽しめる一方で、同じ樹種でも状態にばらつきが出やすい傾向があります。
乾燥の進み方や節の位置、木目の向き、材の取り方しだいで、縮み方や割れ方には差が出ます。
乾燥管理が丁寧な無垢材なら安定しやすいものの、選ぶ際は「乾燥方法」と「どこまで管理しているか」を確認しておくと安心です。
集成材
集成材は、乾燥させた板(ラミナ)を重ねて貼り合わせた木材です。
材料の性質を揃えやすく、寸法の変化が想定しやすい点が強みになります。
とくに構造用集成材は、製造段階で含水率が管理されていることが多く、安定性を優先したい場合に選びやすい材料です。
無垢材より個体差が小さく、設計や施工の面でも品質を扱いやすいことが採用が増えている理由の一つと言えるでしょう。
ただし、集成材は接着剤を用いるため、品質はメーカーや規格、用途によって差が出ます。
集成材だから大丈夫と決め切らず、構造用としての規格や現場での扱い方まで確認しておくと安心です。
目的で選び分ける
含水率の視点で整理すると、無垢材は木の風合いを楽しめる分、乾燥状態など材料のコンディションを丁寧に見ておきたい素材です。
集成材は寸法が安定しやすい反面、製品としての規格や品質の捉え方がポイントになります。
例えば、手に触れる場所や目につく場所は無垢材で質感を活かし、構造の主要部は安定性を優先して集成材を使う、といった組み合わせも現実的です。
素材名だけで決め切るより、どの部位に何を求めるかを先に決めておくと選びやすくなります。
迷ったときは、前の章の3つの軸——乾燥状態・現場の管理・部位ごとの目安——に立ち返り、条件を照らし合わせて判断すると納得しやすいでしょう。
木材の含水率によくある質問
ここでは、木材の含水率についてよくある疑問や不安になりやすい点をQ&A形式で整理していきます。
- 含水率は何%なら安心ですか?
-
目安は部位で変わります。
構造材は20%以下、内装材は15%以下をひとつの基準にして選びましょう。
ただ、数字だけで決め切らず、乾燥材か、現場で濡らさないかまでセットで見ることが大切です。
- 上棟日に雨が降ったら木材はダメになりますか?
-
即ダメになるわけではありません。
重要なのは、濡れた時間を短くして乾かす手順があるかどうかです。
シート養生、通気、乾燥の確認など、現場のルールを聞いておきましょう。
- 「背割り」がある柱は弱くなりませんか?
-
基本は、割れを逃がすための加工です。
見た目の不安は出ますが、木の乾燥収縮を前提にした工夫として扱われます。
判断に迷う場合は、構造的な影響がないか確認しましょう。
- 無垢材の床は、すき間や反りが出ますか?
-
出る可能性はあります。
室内の乾燥で木が縮むためです。
含水率が低めの材を選び、施工方法(伸縮の逃がし方)もセットで考えると失敗しにくくなります。
- 含水率は現場で測って確認できますか?
-
可能です。
含水率計で測定できますが、測り方や測定位置で数値は変わります。
測定の有無より、測った結果をどう判断しているか(基準・記録・対応)を聞くのがポイントです。
含水率を味方に安心できる家づくりを始めよう!

ここまで、木材の含水率の基本から、未乾燥材と乾燥材(KD材)の違い、部位別の目安、割れの見方、無垢材と集成材の考え方まで整理してきました。
本記事のポイントをまとめると以下のとおりです。
- 含水率は木材の強度・変形・腐朽リスクに関わる重要指標
- 乾燥済みかどうかで差が出る(未乾燥材は動きやすく、KD材は安定しやすい)
- 乾燥材でも濡れれば戻るため雨養生など現場管理が欠かせない
- 目安は部位で考える(構造材20%以下、内装材15%以下)
- 迷ったら「数値・乾燥・管理」の3点で判断する
含水率は、普段の暮らしでは見えない数字です。
それでも家づくりでは、仕上がりの安定性や住み始めてからの手直しの出やすさに影響しやすいポイントでもあります。
住宅会社に確認するときは、数値だけでなく「乾燥の前提」と「現場での扱い」まで一緒に聞いてみてください。
小さな確認が、長く安心して住める家につながります。

