近年、住宅の断熱性能を語る場面で「G1」「G2」「G3」という言葉を目にする機会が増えています。
一方で、「数値が違うことは分かるけれど、実際の暮らしがどう変わるのか分かりにくい」「結局どこを目指せば後悔しないのか判断できない」と感じている方も多いのではないでしょうか?
断熱性能は、UA値などの数値だけで判断できるものではありません。
本当に重要なのは、冬の家の中がどれくらい暖かく保たれるのか、部屋ごとの温度差がどれほど小さくなるのかといった、日々の生活に直結する部分です。
G1・G2・G3は、こうした「体感」「健康」「省エネ性」を軸に整理された住宅性能のグレードです。
本記事では、それぞれの違いを数値だけで比較するのではなく、暮らしの変化と考え方の分かれ目という視点から、わかりやすく整理していきます。
G1・G2・G3は「断熱性能の差」ではない

G1・G2・G3という区分は、断熱材の厚みやUA値の違いを示す単純なランクではありません。
本来は「その家でどのような温熱環境が実現できるのか」「暮らしの質がどこで変わるのか」を段階的に整理した考え方です。
まずは、この3つのグレードを理解するうえで欠かせない前提から見ていきましょう。
まとめると以下のとおりです。
- 断熱性能の本質は「数値」ではなく「室温」
- 最低室温という考え方が重視される
- 暮らしの質に影響する「温度ムラ」という視点が大切
それぞれ具体的に見ていきましょう。
断熱性能の本質は「数値」ではなく「室温」
断熱性能というとUA値などの数値に目が向きがちですが、実際の暮らしで重要なのは、家の中がどの程度の室温で保たれるかという点です。
数値はあくまで性能を測るための指標であり、目的ではありません。
室温という結果に目を向けることで、住み心地をより具体的にイメージできるようになります。
最低室温という考え方が重視される理由
最低室温とは、暖房をしていない部屋でもどこまで温度が下がらないかを示す考え方です。
この視点を取り入れることで、リビングだけでなく廊下や脱衣所なども含めた、家全体の快適性を評価できるようになります。
温度差が小さい家ほど、健康面のリスクも抑えやすくなります。
暮らしの質に影響する「温度ムラ」という視点
同じ家の中でも、部屋ごとに温度差が大きいと、移動のたびに不快さを感じやすくなります。
温度ムラはストレスやヒートショックの原因にもなり、暮らしの質を大きく左右します。
G1・G2・G3は、この温度ムラをどこまで抑えられるかという視点で整理されています。
G1とはどんな断熱性能?暮らしの特徴を解説

G1は、G1・G2・G3の中でも最も現実的に採用しやすいグレードです。
現行の省エネ基準より一段上の性能を持ち「寒い家」からの脱却を目指す最初のステップとして位置づけられています。
では、G1がどの程度の断熱性能を持ち、日々の暮らしの中でどのような変化を感じやすいのかを、具体的に見ていきましょう。
G1の性能イメージ
G1は、最低室温がおおむね10℃を下回らないことを目標とした断熱性能です。
国の断熱等性能等級では等級5相当となり、現行基準より一段上の水準に位置づけられます。
まずは「寒すぎる家」から脱却するための性能と考えると分かりやすいでしょう。
G1で感じやすい暮らしの変化
G1レベルになると、従来の住宅でよくあった「家の中なのに外と変わらない寒さ」は大きく改善されます。
リビングはしっかり暖まり、以前よりも暖房効率が良くなったと感じやすいでしょう。
ただし、廊下や脱衣所、トイレなどの非暖房室では、まだひんやり感が残るケースもあり、「寒い家」からは脱却できるものの、家全体が均一に快適になる段階までは届かない、というのがG1の位置づけです。
G1が向いている暮らしの考え方
G1は、現行の省エネ基準より一段上の断熱性能を確保しながら、住まいの基本的な寒さストレスを軽減できる現実的な水準です。
リビングなど生活の中心となる空間の暖房効率が高まり、「寒い家」から脱却した実感を得やすくなります。
一方で、家全体を常に均一な温度に保つというよりは、必要な場所を適切に暖める暮らし方を前提とした性能でもあります。
そのため、居室中心で過ごす時間が長く、非暖房室は必要に応じて使う生活スタイルであれば、G1でも十分な快適性を感じられるでしょう。
コストとのバランスを重視しつつ、住宅性能を確実に底上げしたい人にとって、G1は「無理のない性能向上」を実現する選択肢です。
まずは住まいの質を一段引き上げたいと考える人に向いた断熱性能といえます。
なぜG2が「一つの分かれ目」と言われるのか

G1からG2へ性能を引き上げたとき、住宅の快適性は連続的に良くなるだけでなく、体感としてはっきりとした変化が現れます。
そのためG2は、単なる中間グレードではなく「暮らしが変わる境界線」として語られることが多いです。
では、G2とは具体的にどのような性能水準なのか、そしてなぜ「分かれ目」とまで言われるのかを、室温や住環境の変化という視点から見ていきましょう。
G2の性能イメージ
G2は、非暖房室の最低室温がおおむね13℃を下回らないことを目標としたグレードです。
国の断熱等性能等級では等級6に相当し、現在の日本における高水準な断熱性能と同じ位置づけになります。
この水準に達すると、家全体の断熱・気密性能が底上げされ、特定の部屋だけが極端に冷え込む状況が大きく改善されます。
G2で大きく変わる住環境のポイント
G2レベルの住宅になると、冬の暮らし方が明確に変わります。
たとえば、朝起きて廊下に出た瞬間の身が引き締まるような寒さや、脱衣所で服を脱ぐときの不快感が大きく減ります。
これは、リビングなどの暖房室だけでなく、廊下・トイレ・洗面所といった非暖房室の温度が一定水準以上に保たれるためです。
家の中の温度ムラが小さくなることで、ヒートショックのリスクも大きく低減され、特に高齢者や小さな子どもがいる家庭では安心感が高まります。
また、家全体が使いやすい温度になることで「あの部屋は寒いから行かない」「暖房のある部屋だけで過ごす」といった生活上の制限が少なくなり、住まいを無駄なく使えるようになります。
G2が「分かれ目」とされる理由
G2は、断熱性能の向上が数値上の違いにとどまらず、住み始めてからの体感としてはっきりと現れる水準です。
廊下や脱衣所を含め、家の中の温度ムラが大きく改善されることで、寒さによるストレスやヒートショックのリスクが抑えられ、暮らしの安心感が一段高まります。
初期コストはG1よりも上がりますが、快適性・健康面への配慮・省エネ性のバランスが取りやすく、性能を上げた意味を実感しやすい点がG2の特徴です。
そのためG2は、特定の部屋だけを暖める暮らしではなく、住まい全体を無理なく使い、長く快適に暮らしたいと考える人にとって一つの基準点となる断熱性能といえるでしょう。
G3はどんな人に向いている?導入前に知っておきたいポイント

G3は、G1・G2と比べても求められる性能水準が大きく異なるグレードです。
誰にとっても最適というわけではありませんが、暮らし方や価値観が合えば、非常に高い満足度を得られる可能性があります。
この章では、G3が力を発揮しやすいケースと、導入前に整理しておきたい注意点を踏まえながら、G3という選択がどのような人に向いているのかを見ていきます。
G3の性能イメージ
G3は、非暖房室の最低室温がおおむね15℃を下回らないことを目標とした、G1・G2のさらに上に位置づけられる最も高い断熱性能グレードです。
暖房していない空間でも極端な冷え込みが起こりにくく、家全体を安定した温熱環境で保つことを前提としています。
国の断熱等性能等級では等級7に相当し、日本の住宅性能としては最高水準に位置づけられます。
G3で実現できる暮らしの特徴
G3レベルでは、家の中がほぼ均一な温度に保たれます。
冬でも室内が冷え込みにくく、小さな暖房設備で家全体をカバーできるケースも珍しくありません。
日射取得や間取りを工夫した設計と組み合わせれば、日中は無暖房でも快適に過ごせる日が増えます。
寒いと感じる瞬間がほとんどない家を目指したい人にとっては、大きな魅力があります。
G3を選ぶ前に整理しておきたい注意点と向いている人
G3は、G1・G2と比べても求められる性能水準が大きく異なり、住まい全体の快適性を極限まで高めることを目指した断熱性能です。
家中の温度ムラがほとんどなくなり、暖房に頼りすぎない安定した室内環境を実現できます。
その一方で、G3の性能を十分に発揮するためには、断熱材や窓の性能だけでなく、設計力や施工精度が非常に重要になります。
間取りや日射取得・遮蔽の計画が不十分な場合、性能を持て余してしまう可能性もあるため、誰にとっても最適な選択肢とは限りません。
G3が真価を発揮するのは、住まい全体を常に快適な環境として使いたい人や、将来的な省エネ性・脱炭素への価値観を重視する人です。
性能そのものに意味を見出し、長期的な視点で住まいづくりを考えたい人にとって、G3は高い満足度をもたらす断熱性能といえるでしょう。
UA値は目安|数値だけで判断してはいけない理由

断熱性能を比較する際、UA値は分かりやすく便利な指標です。
UA値(外皮平均熱貫流率)とは、住宅の壁・屋根・床・窓など外皮全体から、どれだけ熱が逃げやすいかを示す指標で、数値が小さいほど断熱性能が高く、室内の熱が外へ逃げにくい住宅であることを意味します。
しかし、UA値が同じであっても、実際に暮らしたときの快適性が大きく異なるケースは少なくありません。
ここでは、UA値だけでは見えにくい「体感の差」が生まれる理由を、設計や環境の視点から整理します。
同じUA値でも体感が変わる理由
UA値は建物全体の断熱性能を示す平均値であり、室内の温度分布や日射の影響までは反映しきれません。
そのため、同じUA値であっても、日射の取り込み方や間取りの違いによって、暖かさや寒さの感じ方が大きく変わることがあります。
たとえば、日射を適切に取り込める住宅では、暖房に頼らなくても室温が安定しやすくなりますが、日射が遮られやすい間取りでは、数値上は同等でも寒さを感じやすくなる場合があります。
地域条件・日射・窓計画の影響
住宅の快適性は、建てる地域の気候条件によっても左右されます。
同じ断熱性能であっても、日射量や外気温、湿度の違いにより、室内環境は大きく変わります。
特に窓は、熱の出入りが最も大きい部分です。
窓の大きさや配置、ガラスの種類によって、冬の日射取得や夏の日射遮蔽の効果が変わり、体感温度に直接影響を与えます。
設計と施工精度が快適性を左右する
断熱材や窓の性能が高くても、設計や施工の精度が伴わなければ、本来の性能は発揮されません。
隙間や施工ムラがあると、計算上のUA値と実際の住み心地に差が生じてしまいます。
快適な住環境を実現するためには、数値だけを見るのではなく、設計全体の考え方や施工品質まで含めて判断することが重要です。
UA値はあくまで目安として捉え「どのような家として完成するのか」を総合的に考える視点が求められます。
G1・G2・G3で迷ったときの考え方

どのグレードを選ぶべきかは、数値の優劣だけで決められるものではありません。
以下の視点から整理すると判断しやすくなります。
- 家族構成や健康面への配慮がどれくらい必要か
- 冬の冷えや温度差をどこまで減らしたいか
- 冷暖房の使い方や光熱費への考え方
- 10年後、20年後も同じ快適性を求めるかどうか
「どれが正解か」ではなく「自分たちの暮らしに合うか」という視点で考えることが大切です。
家族構成や健康面、将来の暮らし方まで含めて考えることで、自分たちにとって無理のない選択が見えてきます。
G1・G2・G3は、自分たちの暮らし方に合う断熱性能を考えよう!

G1・G2・G3という断熱性能グレードについて、それぞれの特徴や違い、暮らしへの影響を中心に解説してきました。
本記事のポイントをまとめると以下のとおりです。
- G1・G2・G3は、UA値などの数値だけでなく、最低室温を軸に暮らしの質を段階化した断熱性能グレード
- G1は「寒い家」から脱却するための現実的な第一歩となる性能水準
- G2は家の中の温度ムラが大きく改善され、快適性・健康・省エネのバランスが取れた分かれ目
- G3は最高水準の断熱性能を備え、価値観や暮らし方が合う人にとって大きな満足度をもたらす選択肢
- どのグレードが正解かは一つではなく、家族構成や冷暖房の使い方、将来の暮らし方によって最適解は変わる
G1・G2・G3は、単なる性能の優劣を示すための指標ではありません。
それぞれが「どのような住環境で、どんな暮らしをしたいのか」という価値観を反映する選択肢です。
数値に振り回されるのではなく、家の中での過ごし方や、これから先の暮らしを想像しながら検討することが、後悔しない家づくりにつながります。
自分たちにとって心地よい基準を見つけることが、最良の断熱性能選びと言えるでしょう。

