「長く安心して住める家にしたい」「将来売るときも、きちんと評価される家にしたい」
そんな希望に対して、国の制度として用意されているのが長期優良住宅です。
長期優良住宅は、耐震性・省エネ性・劣化対策などの基準を満たし、維持保全計画に沿って点検・修繕を続けながら、住まいを良好に保ちやすい住宅として認定される仕組みです。
認定を受けると、住宅ローン控除や固定資産税などで有利になりやすい一方、申請や認定後の点検・記録まで見据えて進める必要があります。
本記事では、長期優良住宅で何を基準に判断すべきかをわかりやすく整理していきます。
長期優良住宅とはどんな制度か

長期優良住宅は、国が定めた基準を満たし、所管行政庁(自治体)に申請して認定を受けた住宅のことです。
ポイントは、性能が高い家というだけでなく、建てた後も計画的に点検・修繕しながら、長く良好な状態で使い続けることまで含めて制度設計されている点にあります。
家づくりでは、完成時のスペックに目が向きがちです。
しかし長期優良住宅は、住み始めてからのメンテナンスまで含めて長寿命化を実現しようとういものなのです。
長期優良住宅の定義と認定の流れ
長期優良住宅にするには、設計段階で認定基準に沿って計画を整え、着工前後のタイミングで申請を行い、認定を受ける必要があります。
一般的な流れは次のイメージです。
- 認定基準を満たす仕様で設計する
- 維持保全計画(点検・補修の計画)を作る
- 所管行政庁へ申請し、認定を受ける
- 住み始めてからは計画に沿って点検・修繕し、記録を残す
認定を取得して終わりではなく、認定後の運用が前提になっているのが特徴です。
制度ができた背景
長期優良住宅が推進されてきた背景には、日本の住宅が短いサイクルで建て替えられやすかったことがあります。
一般に、日本は欧米に比べて住宅の使用年数が短い傾向が指摘されてきました。
この流れを変えるために、住宅政策は「量の確保」から「質の向上」へ軸足を移し、住生活基本法(2006年)などを背景に、良質な住宅を長く使い、次の世代へ引き継ぎやすい社会へ転換する方向が強まりました。
2007年5月に自民党の住宅土地調査会がまとめた「200年住宅ビジョン」も、ストック型社会への転換を後押しした考え方の一つです。
一般住宅との違い
一般的な住宅は、最低限の基準を満たして建てられていれば住み始めることはできます。
一方、長期優良住宅は次の点で考え方が一段上にあります。
- 性能の基準が高い:耐震・省エネ・劣化対策など
- 直しやすさが設計に入る:配管や点検のしやすさ
- 維持保全計画と記録が前提:点検・修繕を継続する
この違いが、税制優遇や金利優遇といったメリットにもつながります。
長期優良住宅の認定基準を整理する

長期優良住宅の検討で最初につまずきやすいのが、基準が多くて結局どこが重要なのかよくわからない、という点です。
認定基準は大きく分けると次のような柱で構成されています。
- 劣化対策
- 耐震性
- 維持管理・更新の容易性
- 可変性
- バリアフリー性
- 省エネルギー性
- 維持管理
- 維持保全計画
これに加えて、住戸面積・居住環境・災害対策といった要件も絡みます。
ここからは、主な認定基準の内容を解説していきます。
劣化対策で長持ちさせる
長期優良住宅では、柱や梁などの構造躯体を長く使えるように、腐朽やシロアリ、湿気への対策が求められます。
ここで重要なのは、単に材料を強くすることではなく、劣化しにくい環境をつくり点検しやすい形にすることです。
チェックしやすいポイントは以下のとおりです。
- 床下や小屋裏に点検口があり、目視できる設計になっているか
- 床下の湿気対策(防湿・換気・基礎の考え方など)が明確か
- シロアリ対策が仕様として整理されているか(防蟻処理の範囲・更新性など)
住んでから見えない部分ほど設計の誠実さが出ると思っておくと、会社比較もしやすくなります。
耐震性は等級2以上が基本
長期優良住宅は、大地震でも倒壊しにくく、仮に被害を受けても補修して住み続けられるレベルが求められます。
基準としては耐震等級2以上が基本ラインです。
ただ、実際には、等級2で十分なのか、等級3まで狙ったほうがよいのか、で迷う方も多いはずです。
この判断は、次の2点で整理するとぶれにくくなります。
- 災害リスクや立地(揺れやすさ・地盤)に対して、どこまで余裕を持たせたいか
- 間取りの自由度やコストとのバランスをどう取るか
耐震は見た目で判断できない分、計算方法、設計方針、説明の丁寧さなどが重要です。
等級そのものだけでなく、どうやってその等級を確保しているか、まで確認すると安心につながるでしょう。
省エネ性はZEH水準が前提
長期優良住宅の省エネは、断熱等性能等級5と一次エネルギー消費量等級6(いわゆるZEH水準)が基準になっています。
つまり、断熱だけを上げればOKではなく、外皮(断熱・窓)と設備効率(給湯・換気など)をセットで整える必要があります。
※省エネ要件は見直しが進んでおり、2025年4月1日以降の申請は改正後の基準で判断されます。設計段階で、今回の申請がどの基準で判定されるかを施工会社に確認しておくと安心です。
数値の達成だけでなく、窓の仕様や日射し対策、換気計画まで含めて設計として筋が通っているかを見ると、住み始めてからの満足度が変わります。
維持管理しやすい設計にする
家は必ずメンテナンスをする必要があります。
長期優良住宅では、構造より寿命の短い部分(給排水管など)を中心に、点検・清掃・交換がしやすい設計が求められます。
ここは将来の工事費に直結しやすいので、次のような視点で確認しておくのがおすすめです。
- 配管や設備が点検しやすい位置にあるか
- 交換時に大きく壊さなくても済む設計になっているか
- 施工会社が更新のしやすさを説明できるか
いまの便利さより、10年後に直しやすいかをしっかりとチェックしておきましょう。
維持保全計画で点検と記録を回す
長期優良住宅は、認定を取ったあとも点検・修繕を計画的に行い、記録を残すことが前提です。
つまり、制度として建てた後の運用まで含めている点が最大の特徴です。
ここで確認したいのは、難しい制度用語ではなく次の2つです。
- 点検の内容と頻度が現実的か(誰が、いつ、何をするのか)
- 記録を残す仕組みがあるか(点検報告書、修繕履歴など)
記録は提出のためではなく、将来の修繕や売却時に「この家はちゃんと管理されてきた」と説明できる材料になります。
ここが整っているほど、長期優良住宅の強みが生きます。
面積や住環境などの条件もある
長期優良住宅は性能だけでなく、良好な住環境に配慮していることや一定の住戸面積などの条件もあります。
このあたりは自治体ごとに判断が絡む部分があるため、細部は施工会社や所管行政庁で確認が必要ですが、性能が満たせても他要件で引っかかることがあるという点は押さえておきましょう。
災害リスクが高い土地は要注意
近年は災害リスクへの配慮が重視され、区域によっては認定が難しい場合があります。
たとえば土砂災害特別警戒区域など、リスクが特に高い区域は認定が難しいケースがあります。
土地探しから始める場合は、早めにハザード情報を確認して、不動産会社や施工会社に建てられるかだけでなく認定が通るかどうかも確認しておくとよいでしょう。
長期優良住宅で得られるメリット

長期優良住宅のメリットは、性能が高いから快適という話だけではありません。
認定を受けることで、税金の軽減や住宅ローンの優遇など、家計に直接効く支援が受けやすくなる点が大きな魅力です。
ただ優遇制度は、入居時期や世帯要件、床面積などで条件が変わります。
検討時に比較しやすいよう、主なメリットを整理してみましょう。
- 住宅ローン減税で控除枠が広がる
- 固定資産税の軽減期間が延びる
- 登記・取得時の税負担が軽くなる
- 地震保険料の割引につながる
- 補助金の対象になりやすい
- フラット35Sで金利負担を抑えやすい
それぞれ詳しく見ていきます。
住宅ローン減税で控除枠が広がる
住宅ローン減税は、年末のローン残高の0.7%が13年間にわたり所得税等から控除される制度です。
長期優良住宅は高性能住宅に位置づけられるため、一般の住宅よりも借入限度額(=控除の上限につながる枠)が大きくなります。
たとえば、2024年・2025年入居の新築では、区分ごとに借入限度額が次のように設定されています。
- 長期優良住宅・低炭素住宅:4,500万円
- ZEH水準省エネ住宅:3,500万円
- 省エネ基準適合住宅:2,000万円
また、省エネ基準に適合しない「その他の住宅」は、原則として控除の対象外(控除額0円)という扱いです(一定の経過措置があるケースを除く)。
借入額が大きい人ほど、この限度額の差が家計に与える影響は大きくなります。
長期優良住宅を検討するなら「コスト増」と「控除額の差」をセットで見ておくと判断がぶれにくいでしょう。
なお、子育て世帯・若者夫婦世帯は限度額が上乗せされる特例があるため、該当する場合は条件を確認しておくと安心です。
固定資産税の軽減期間が延びる
新築住宅には固定資産税(家屋)の軽減措置があり、一定期間は税額が1/2になります。
一般住宅の軽減期間は原則3年間ですが、長期優良住宅は5年間に延長されます(共同住宅等は扱いが異なる場合があります)。
固定資産税は毎年かかるコストなので、軽減期間が長いほどあとから差が出てくるメリットです。
入居後の固定費を少しでも抑えたい場合は、見落としにくいポイントになります。
登記・取得時の税負担が軽くなる
家を建てるときは、建築費だけでなく、登記や取得にかかる税金も発生します。
長期優良住宅は、登録免許税の税率軽減が適用されるケースがあり、不動産取得税も控除額が上乗せされます。
たとえば控除額は、一般的な住宅が1,200万円のところ、長期優良住宅では1,300万円になる扱いです。
こうした税金は、後からまとめて来ることが多いため、資金計画を組む段階で、優遇の対象になるか・手続きは誰が行うかまで確認しておくと安心です。
地震保険料の割引につながる
地震保険は、耐震等級など建物の耐震性能に応じて保険料の割引が受けられます。
長期優良住宅は耐震性の確保が前提になるため、結果として割引につながるケースがあります。
割引を受けるには、証明書類が必要になることもあるため、加入時に確認しておくとスムーズです。
補助金の対象になりやすい
補助金は年度や地域、予算枠によって条件が変わりますが、高性能住宅向けの支援策では、長期優良住宅が対象に入りやすい傾向があります。
ただ補助金が使える前提で計画するとズレやすいので、検討段階で施工会社に今年の対象可否を確認しておくのが鉄則です。
フラット35Sで金利負担を抑えやすい
住宅ローンは、金利が少し違うだけでも総支払額が変わります。
長期優良住宅は一定の性能要件を満たすため、「フラット35」を使う場合に「フラット35S」の対象となり、最初の一定期間は金利が下がることがあります。
税制優遇と金利優遇は、別々に見るより、合算してどれくらい差になるかで考える方が判断しやすくなるでしょう。
初期費用が想定より増えそうな場合ほど、総額で比べてみる価値があります。
長期優良住宅のデメリットと注意点

長期優良住宅は、メリットが多い一方で、認定を前提にすると負担が増えるポイントもあります。
ここを知らずに進めると、思ったより大変だったと感じることもあるため注意が必要です。
そこで、ここではデメリットと先に知っておくと失敗しにくいポイントを押さえておきましょう。
まとめると以下のとおりです。
- 建築費が上がりやすい
- 申請や審査の手間が増える
- 点検と記録が前提になる
- 土地条件で「後戻り」が起きることがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
建築費が上がりやすい
長期優良住宅は、耐震性・省エネ性・劣化対策などを一定水準以上で満たす必要があります。
そのため、仕様のグレードや施工の手間が増えやすく、結果として建築費が上振れしやすいのは事実です。
特に影響が出やすいのは、断熱・窓など外皮性能の強化、耐震性能の強化、劣化対策や点検性の確保、配管計画など維持管理のしやすさを盛り込む部分です。
ただ、高くなる=損とは限りません。
税制優遇や金利優遇で回収できる部分もあれば、光熱費や修繕費の抑制につながる部分もあります。
初期費用だけで判断せず、増額分と優遇・維持費を並べて比較する方が、結論は出しやすくなるでしょう。
申請や審査の手間が増える
長期優良住宅は、基準に適合していることを示す書類が必要になり、申請手続きも発生します。
会社側が慣れていればスムーズですが、体制によっては設計確定や着工までのスケジュールがタイトになったり、書類の追加・修正対応が入ったりすることがあります。
申請関連の費用が別途になるケースもあるため、見積もり比較では「申請費用がどこまで含まれるか」「施主側で対応が必要な作業があるか」を確認しておくとよいでしょう。
点検と記録が前提になる
長期優良住宅は「建てた後にどう管理するか」まで含めた制度です。
認定後は、維持保全計画に沿って点検・修繕を行い、記録を残していくことが前提になります。
ここで負担になりやすいのは、点検そのものより記録を残し続ける運用です。
忙しいと後回しになりがちですが、記録が途切れると将来売却するときに長期優良住宅としての強みを説明しにくくなる場合があります。
施工会社の点検体制やアフターサービスと合わせて、無理なく回せる形を最初に決めておくとよいでしょう。
土地条件で「後戻り」が起きることがある
災害リスクの高いエリアでは、長期優良住宅の認定に影響が出ることがあります。
問題は、これを設計が進んだ後や契約後に気づくと、修正が大きくなりやすい点です。
土地を決める前に、自治体のハザード情報に加えて、不動産会社や施工会社に「この土地は長期優良住宅の認定を前提に進められるか」を早めに確認しておくと、無駄な手戻りを避けやすくなります。
長期優良住宅はチェックポイントを確認して計画的に検討しよう!

ここまで、長期優良住宅の制度の考え方から、認定基準、メリット・デメリットまでを整理しました。
土地は早めにハザード情報を確認し、認定前提で進められるか施工会社に確認しておくと安心です。
あとは耐震・省エネの方針と、申請費用、点検・記録の回し方を先に固めておきましょう。
最後に本記事の要点をまとめます。
- 長期優良住宅は、性能と維持管理の仕組みを満たした住宅を行政が認定する制度
- 認定には、劣化対策・耐震性・省エネ性・維持管理に加え、維持保全計画(点検と記録)が求められる
- メリットは、住宅ローン減税や固定資産税など税制優遇、金利優遇、保険料割引が中心
- 注意点は、建築コストや申請の手間、点検・記録の運用負担が増えること
- 土地条件(災害リスク等)によっては認定が難しい場合がある
長期優良住宅は高性能にすることだけが目的ではなく「長く快適に住み続けるための設計と運用」を整える考え方です。
認定を前提に仕様と見積もりを早めにそろえ、回収見込みと維持管理の続けやすさまで含めて比較すると納得感のある判断につながります。

