「冬は暖かく、夏は涼しい家に住みたい」
その願いを支える土台が、断熱材と断熱工法です。
断熱材は壁の中に入ると、あとから簡単には交換できません。
だからこそ素材の違いだけでなく、結露や気密、施工品質まで含めて納得して選びたいところです。
2025年4月以降は原則として新築住宅を含む新築建築物で省エネ基準への適合が求められる流れとなり、断熱への関心も高まっています。
ただ、現場では「高性能材を入れた=安心」と言い切れない場面もあります。
この記事では、代表的な断熱材と工法の違いを整理し、暮らし方や地域条件に合わせた選び方のポイントをわかりやすくまとめます。
断熱材で家の快適さが変わる理由

断熱材は、暖かさや涼しさだけでなく、温度ムラや光熱費、結露の起きやすさにも関わってきます。
まずは断熱材について役割や特徴を整理しておくと、素材選びがしやすくなります。
断熱材の役割
家の中では、室内の熱が壁や屋根、床を通って外へ逃げたり、逆に外の熱が室内へ入り込んだりしています。
断熱材はその移動を抑え、冷暖房で整えた温度を保ちやすくする存在です。
結果として、体感の快適さだけでなく冷暖房の効き方にも差が出てきます。
断熱は「素材」と「工法」を分けて考える
断熱を考えるときは「何で断熱するか(素材)」と「どこにどう入れるか(工法)」を分けて整理すると迷いにくくなります。
たとえばグラスウールやウレタンフォームは「断熱材の種類(素材)」で、充填断熱や外張り断熱は「入れ方(工法)」の話です。
素材の性能が高くても、すき間ができる入れ方だったり取り合いが雑だったりすると狙った効果が出せません。
逆に、標準的な素材でも、工法と施工が丁寧なら快適さをしっかり支えられます。
断熱性能は気密・換気・施工で仕上がりが変わる
断熱材そのものが良くても、すき間があれば熱が逃げます。
さらに空気が漏れる(気密が弱い)と断熱の効きが鈍りやすく、壁内の湿気条件も崩れがちです。
つまり断熱は、素材+工法+施工精度+気密・換気計画で完成すると考えるのが安全です。
主要な断熱材の種類と特徴

断熱材は「何が得意で、何が弱いか」を押さえると選びやすくなります。
ここでは、主要な断熱材を一覧で比べたうえで「繊維系」「発泡プラスチック系」それぞれの特徴を整理します。
強みだけでなく注意点も押さえておくことで、選び方がぶれにくくなるでしょう。
【比較表】主要な断熱材の特徴一覧
断熱材は、断熱性だけで決めると「思ったより寒い」「結露が気になる」といったズレが起きがちです。
まずは主要な断熱材を同じ物差しで並べて、メリットと注意点をつかんでおきましょう。
| 断熱材(代表例) | 断熱性 | 耐火性 | 防音性 | 耐水性 | 透湿・調湿 | 施工性 | コスト感 | 注意点 | 向くケース・部位 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| グラスウール(繊維系) | ○ | ◎ | ○ | △ | ○ | △ | ◎ | すき間・欠損・圧縮で性能低下。防湿・気密の連続がカギ | 予算重視の標準仕様/壁・天井(丁寧な施工前提) |
| ロックウール(繊維系) | ○ | ◎ | ◎ | △ | ○ | △ | ○ | 重さ・納まりに工夫が必要な場合。施工慣れで差 | 道路沿い/楽器室/防音も重視したい部屋 |
| セルロースファイバー(繊維系・吹込み) | ○ | ○ | ◎ | △ | ◎ | ○ | △ | 施工品質(密度・含水)で差。会社の管理体制が重要 | 壁内環境(湿気)を意識/防音も欲しい住宅 |
| 硬質ウレタンフォーム(ボード)(発泡系) | ◎ | ○ | △ | ○ | △ | ○ | △ | 目地・取り合いが甘いと抜け道ができる | 外張り断熱/厚み制約がある壁 |
| 吹付けウレタンフォーム(発泡系・現場発泡) | ◎ | ○ | △ | ○ | △ | ◎ | △ | 厚みムラ・施工管理がポイント。後の配線変更がやりにくいことも | 複雑形状の部位/気密を安定させたい |
| フェノールフォーム(発泡系) | ◎ | ○〜◎ | △ | ○ | △ | ○ | △〜× | 材料費が上がりやすい。納まりが雑だと性能が活きない | 室内面積を確保したい/高性能を狙う壁 |
| EPS(ビーズ法ポリスチレン)(発泡系) | ○ | △ | △ | ○ | △ | ◎ | ○ | 火・納まりの配慮が必要。部位選びが大事 | 外張り/基礎断熱など加工性を活かしたい |
| XPS(押出法ポリスチレン)(発泡系) | ○ | △ | △ | ◎ | △ | ◎ | ○ | 同上。とくに湿気の多い部位で使い方が効く | 床下・基礎など水分条件が厳しい部位 |
迷ったときは、避けたい弱点(湿気に弱い/防音が弱い/施工で差が出やすいなど)から候補を絞ると判断しやすくなるでしょう。
繊維系断熱材の特徴

繊維系断熱材は、繊維のすき間に空気を閉じ込めて断熱するタイプです。
代表的なものとしてグラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなどがあります。
コストと実績が強く選択肢として堅実ですが、施工の丁寧さが性能に直結しやすい点はチェックしておきたいポイントです。
グラスウール
定番の断熱材で、コストパフォーマンスの高さが大きな魅力の1つです。
厚みと密度を確保し、すき間なく入れられれば十分な断熱性能が期待できます。
一方、圧縮や欠損、端部のすき間があると体感温度が下がりやすいので、現場の収まりや防湿・気密の連続まで含めて確認したい素材です。
ロックウール
製鉄所の高炉から発生する「スラグ」を主原料にした断熱材で、不燃性や耐熱性に優れています。
吸音性・遮音性も強みなので、道路沿いや楽器を使う部屋など「静かさ」も重視したいときに候補になります。
扱いはグラスウールに近いものの、納まりや施工の慣れで仕上がりが変わるため、実績のある会社だと安心です。
セルロースファイバー
古紙などの木質繊維を吹き込むタイプで、すき間を埋めやすく防音面でも期待できます。
調湿性があり壁内環境を整えたい人に向く一方で、密度管理や含水条件など施工品質の影響を受けやすい面があります。
採用するなら、施工方法や管理体制を具体的に説明できる会社かどうかが大切になります。
発泡プラスチック系断熱材の特徴
発泡プラスチック系は、細かな気泡を閉じ込めて断熱するタイプです。
ウレタン、フェノール、EPS・XPSなどがあり、薄くても性能を出しやすく、納まり次第では気密面でも有利に働きます。
その一方で、目地や取り合いが雑だと抜け道が生まれやすいので、丁寧さが欠かせません。
硬質ウレタンフォーム(ボード)
高断熱で、省スペースでも性能を狙いやすい素材です。
外張り断熱に使われることも多く、断熱ラインを揃えやすいのがメリットになります。
注意したいのは、ボードの継ぎ目や開口部まわりの処理で、ここが雑だと熱も空気も逃げやすくなります。
吹付けウレタンフォーム
現場で発泡させて吹き付けるため、凹凸に追従しやすく、すき間を作りにくい点が強みです。
気密を取りやすい反面、厚みムラが出ると性能が揃いません。
写真管理や検査など、仕上がりの確認ルールがあるかどうかで安心感が変わります。
フェノールフォーム
断熱性能が非常に高く、薄い厚みで性能を確保したいときに有力です。
壁厚の制約がある場合や、より高い断熱水準を狙いたいときに検討されます。
材料費が上がりやすいので、採用するなら「どこに使うと効果が大きいか」を絞ると納得しやすいでしょう。
ポリスチレンフォーム(EPS/XPS)
ポリスチレン系で、軽く加工しやすいのが特徴です。
特に、XPSは耐水性の面で評価され、床下や基礎など湿気条件が厳しい部位で使われることがあります。
いずれも部位選びが重要で、耐火や納まりも含めて、仕様としてどう成立させるかをセットで確認しておくと安心です。
断熱材の選び方のポイント

断熱材選びは、一番良いものを探すよりも、自分の条件で優先順位を決めるほうが失敗しにくいです。
地域の気候や暮らし方、予算、部位ごとの相性まで整理すると、候補が自然に絞れてくるでしょう。
選び方のポイントをまとめると以下のとおりです。
- 地域の気候(寒さ/暑さ/湿気)
- 暮らし方(在宅時間/冷暖房/温度ムラ)
- 予算配分(断熱にかける範囲)
- 部位別の相性(壁/屋根・天井/床下・基礎)
- 防音(道路沿い/楽器/二世帯)
- 気密(C値・測定・施工体制)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
地域の気候(寒さ/暑さ/湿気)
寒冷地は暖房負荷が大きく、断熱の差が暮らしや光熱費に直結しやすい傾向があります。
温暖地でも、夏の湿気が強い地域や冷房運転が長い地域では、壁内環境や結露への配慮が大切です。
寒さや暑さだけでなく湿気も含めて見ると、失敗しにくい選択をしやすいでしょう。
暮らし方(在宅時間/冷暖房/温度ムラ)
在宅時間が長い家庭や、家の中の温度差を小さくしたい家庭ほど、断熱の価値は上がります。
部分的にしか冷暖房を使わない場合は温度ムラが出やすいので、断熱材の選定と合わせて間取りや空調の使い方まで一緒に検討するとズレを減らしやすくなるでしょう。
予算配分(断熱にかける範囲)
断熱に予算を寄せるか設備に回すかは、それぞれの家庭の価値観次第です。
迷ったときは、いきなり高いグレードを狙うより、弱点を作らない部分にお金を使うほうが満足度が上がりやすくなります。
たとえば、施工精度を担保できる仕様になっているか、気密を測定や標準化で確認できるか、結露に配慮した防湿・通気・納まりが取れているかなどです。
こうした土台が整っていれば、素材の性能を活かしやすく、住んでからも後悔しにくくなるでしょう。
部位別の相性(壁/屋根・天井/床下・基礎)
同じ断熱素材でも、使う場所で得意・不得意が変わります。
以下のように部位ごとの注意点を押さえておきましょう。
- 壁:すき間や欠損が出やすい。端部や貫通部の処理が重要
- 屋根・天井:夏の熱対策が効きやすい。納まりと施工性で差が出る
- 床下・基礎:湿気条件が厳しい。耐水性や部位適性を重視したい
防音(道路沿い/楽器/二世帯)
音のストレスは、住んでからだんだんと気になってくるものです。
道路沿い、在宅ワーク、二世帯、楽器などがある場合は、防音に寄与しやすい断熱材も候補に入れると安心です。
断熱材だけでは完結しませんが、室内の「土台の静けさ」は作りやすくなります。
気密(C値・測定・施工体制)
気密は、断熱とセットで考えることが大切です。
空気が漏れると断熱の効きが落ち、計画換気も崩れやすくなります。
気密を重視するなら、素材名だけで判断せず確認の仕組みまで見ておくと安心です。
以下のような点をチェックしましょう。
- 気密測定を実施しているか
- 施工が標準化されているか(気密テープ・部材・納まり)
- 現場でのチェック方法が明確か(写真・検査など)
断熱工法の違いと注意点

断熱は、何の断熱材を使うかだけでなく「どこにどう施工するか」で仕上がりが変わってきます。
ここでは、代表的な次の3つの工法について、その特徴と注意点を整理していきましょう。
- 充填断熱(内断熱)
- 外張り断熱(外断熱)
- 付加断熱(ダブル断熱)
1つずつ詳しく見ていきます。
充填断熱(内断熱)の特徴
柱と柱の間に断熱材を入れる、日本では標準的な工法です。
比較的コストを抑えやすく、壁の厚みを増やさずに断熱を確保しやすい点がメリットになります。
一方で、すき間や欠損、押しつぶしが起きると性能が落ちやすく、施工精度の影響を受けやすい面があります。
防湿層や気密ラインが途中で途切れていないか、配線・配管まわりの納まりが丁寧かも含めて確認しておくと安心です。
外張り断熱(外断熱)の特徴
構造材の外側から家全体を断熱材で包む工法です。
熱の逃げ道(熱橋)ができにくく、断熱ラインを揃えやすいのが強みになります。
さらに、構造体が外気の影響を受けにくく、壁内環境が安定しやすい点も魅力です。
注意したいのは、断熱材の継ぎ目や開口部まわり、基礎との接点です。
ここが雑だと工法の良さが出にくく、性能が落ちる原因になります。
仕様書で納まりが具体的に書かれているかも、事前に確認しておくと安心です。
付加断熱(ダブル断熱)の特徴
充填断熱と外張り断熱を組み合わせる工法で、高い断熱性能を狙いやすくなります。
寒冷地や高性能住宅で採用されることが多く、室内の温度差を小さくしやすいのがメリットです。
ただし、工法が複雑になる分、納まりの設計や施工管理の難易度は上がります。
コストも増えやすいので、断熱だけで判断せず、窓や換気、空調計画まで含めて家全体でバランスを取ると納得しやすくなります。
施工品質チェック|契約前・現場で確認したいポイント

断熱は、素材や工法の選び方以上に、現場で丁寧に施工されているかで差が出ます。
ここでは、契約前に確認できることと現場で見ておきたいことをまとめます。
現場で見たいポイント(すき間・欠損・押しつぶし)
まずは断熱材がすき間なく入っているかを見ます。
見学でチェックしやすいのは次の点です。
- 断熱材にすき間がない(柱との境目、端部)
- 断熱材が欠けていない(配線・配管まわり)
- 断熱材がつぶれて薄くなっていない(押し込み・浮き・たるみ)
- ボード系の継ぎ目(目地)が雑になっていない
- 窓・玄関など開口部まわりの取り合いがきれい
図面・仕様書で見たいポイント(防湿・通気・納まり)
材料名よりもどう納めるかが重要です。
仕様書では次を押さえておくと安心です。
- 防湿・気密をどこで取るかが明記されている
- 通気層や換気の考え方がセットで説明されている
- 開口部・基礎など取り合い部分の納まりが具体的に示されている
- 現場任せが多すぎない(標準の手順がある)
会社選びで見たいポイント(説明・写真・測定)
施工品質は会社の体制で決まります。
判断材料になるのは、説明の具体性と確認の仕組みです。
- 施工手順を写真や事例で説明できる
- 現場チェックの項目や検査の流れが決まっている
- 気密を重視するなら、気密測定の実施や数値の提示がある
- 質問に対して、材料名ではなく納まり・施工方法まで答えられる
断熱材に関するよくある質問
断熱材は種類も工法も幅が広く、打ち合わせのたびに疑問が増えやすい分野です。
ここでは、検討中によく出る質問をQ&A形式でまとめました。
- 断熱材は高いほど快適になりますか?
-
快適性は上がりやすいものの、高い=正解とは限りません。
断熱材の性能が高くても、すき間があったり気密が取れていなかったりすると、体感は思ったほど変わらないことがあります。
まずは施工精度や納まり、気密確認の仕組みを整えたうえで、必要な性能を積み上げるほうが納得しやすいでしょう。
- 外張り断熱なら結露しませんか?
-
外張り断熱は、壁内の温度環境を安定させやすく、結露リスクを下げる方向に働きます。
ただし、開口部や基礎まわりの取り合い、室内の湿度、換気計画などの条件が崩れると結露は起こり得ます。
外張り断熱だから安心と決め打ちせず、納まりと換気までセットで確認するのが安全です。
- 充填断熱でも高性能住宅にできますか?
-
できます。
高性能グラスウールなどを適切な厚みで入れ、すき間を作らず、防湿・気密の層を連続させれば高い断熱性能を狙えます。
ポイントは断熱材の名前よりも、施工の標準化や検査体制があるかどうかです。
- リフォームで現実的な断熱方法は?
-
家の状態と工事範囲によって変わります。
壁を開けられるなら充填(入れ替え)や吹込みが選びやすく、外壁を触れるなら外張りで包むほうが合理的な場合もあります。
まずは「どの部位をどこまで触れるか」を整理し、部位ごとに現実的な方法を決めるのが近道です。
- 断熱材の厚みはどれくらい必要ですか?
-
必要な厚みは、地域・工法・狙う断熱等級(性能)で変わります。
厚みだけで決めると、納まりが破綻したり、施工が雑になって本末転倒になることもあります。
性能は「厚み×施工の丁寧さ」で決まるので、無理のない納まりで確実に施工できるかも一緒に見ておくと安心です。
- 気密(C値)はどこまで気にするべきですか?
-
断熱の効きを安定させたいなら、気密は無視できません。
空気が漏れると温度ムラが出やすく、計画換気も崩れやすくなります。
目標値は家の仕様や地域で考え方が分かれますが、少なくとも「測定して把握する」「施工手順が標準化されている」体制があると安心材料になります。
暮らしに合った断熱材を選んで快適な家づくりを!

ここまで、断熱材の種類と特徴、選び方のポイント、工法の違い、施工品質の確認方法まで整理してきました。
この記事のポイントをまとめると以下のとおりです。
- 断熱材は断熱性だけでなく湿気との相性や防音性、施工のしやすさでも向き不向きが変わる
- 工法(充填/外張り/付加)によって、熱の逃げ方や納まりの難しさ、性能の出やすさが変わる
- 迷ったときは、避けたい弱点(結露・温度ムラ・音・床の冷えなど)から候補を絞ると決めやすい
- 最後に差が出るのは現場なので、写真や説明、測定など確認できる仕組みがある会社だと安心しやすい
断熱は、住み心地を支えるベースになります。
数字だけで決め切らず、地域条件と暮らし方に合う選択を重ねて、快適な家を長く保てるように整えていきましょう。
【参考文献】
・硝子繊維協会ホームページ
・ロックウール工業会ホームページ
・ウレタンフォーム工業会ホームページ
・フェノールフォーム協会ホームページ
・発泡スチロール協会ホームページ
・日本セルローズファイバー工業会ホームページ
・断熱建材協議会ホームページ

