「家を建てるならZEH(ゼッチ)にしておけば安心。」 近年、住宅展示場やSNSなどでこのような言葉を目にする機会が増えました。
背景にあるのは、国のルールが「省エネは推奨」から「省エネは前提」へと切り替わっていることです。
2025年4月以降に着工する原則すべての住宅・建築物で省エネ基準適合が義務化され、さらに2030年度以降は新築住宅でZEH水準の省エネ性能確保を目指す方針が示されています。
本記事では、ZEHの基本を整理したうえで、GX志向型住宅(GX-ZEH)の要点とこれからの家づくりで後悔しないための判断軸までわかりやすく整理します。
ZEH(ゼッチ)とは?

ZEHは、断熱や省エネ設備によってエネルギーの使い方そのものを効率化し、暮らしの快適さを保ちながらエネルギー消費を減らす住宅です。
太陽光発電などでつくった電気も活かして年間のエネルギー収支を限りなくゼロに近い状態へ寄せていきます。
ZEHの基本
ZEHは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略です。
外皮(断熱)や高効率の設備によって家庭で使うエネルギーを抑え、太陽光発電などでつくったエネルギーで不足分を補うことで、年間の一次エネルギー収支を実質ゼロに近づける考え方を指します。
ここで大切なのは、電気代が必ずゼロになるという話ではないこと。
ZEHが目指しているのは、家の性能と設備の組み合わせでエネルギーを上手に使える状態にしていくことです。
ZEHを支える3要素
ZEHは「断熱」「省エネ」「創エネ」の3つをセットで考えます。
基本は、断熱で土台をつくり省エネで消費を減らし、最後に創エネで不足分を補う流れです。
- 断熱(外皮性能)
- 夏は外の熱を入れにくく冬の熱を逃がしにくくする役割
- ここが弱いと高性能なエアコンでも効きにくく結果的に燃費の悪い家になりがち
- 省エネ
- 暖冷房・換気・給湯・照明などの設備を効率化して消費を抑える考え方
- 機器の性能だけでなく換気方式や給湯の選び方でも差が出る
- 創エネ
- 太陽光発電などでエネルギーをつくること
- ただ載せれば終わりではなく断熱と省エネで減らしたうえで必要な分をどう補うかがポイント
定義のポイント|20%削減と100%削減の意味
戸建住宅のZEH定義(改定版)では、外皮(断熱)を強化したうえで、一次エネルギー消費量を段階的に減らしていく考え方が示されています。
対象は暖冷房・換気・給湯・照明です。
- 再生可能エネルギー等を除いた状態で一次エネルギー消費量を20%以上削減
- 太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入し、再エネ等を加えた一次エネルギー消費量を100%以上削減することを目指す
また、再エネによるエネルギー供給は敷地内(オンサイト)に限定し、自家消費分に加えて売電分も対象に含める整理です。
あわせて、全量買取ではなく余剰買取が望ましいこと、蓄電池の活用が望まれることにも触れられています。
「一次エネルギー」とは?電気代ゼロと同じではない
一次エネルギーは、電気やガスなどの使用量を、決められたルールで換算して比較できるようにした住宅のエネルギー性能を示す指標です。
つまりZEHは「電気代が必ずゼロになる家」を意味する言葉ではありません。
ただ、断熱でムダな熱の出入りを抑え、省エネ設備で消費を減らし、創エネで不足分を補う、という考え方そのものが、エネルギー価格の変動に左右されにくい住まいをつくりやすいのは確かです。
なぜ今ZEH?2025年義務化と2030年ZEH水準のロードマップ

ZEHは突然現れたブームではなく、日本が抱えるエネルギー問題と深く関わりながら段階的に普及してきました。
背景には、電力の安定供給への不安やエネルギー価格の変動、そして脱炭素の流れがあります。
暮らしに必要なエネルギーを「できるだけ減らす」「自宅でまかなえる範囲を増やす」という考え方が、家づくりの基準そのものに入り込んできたということです。
その動きを制度としてはっきり示しているのが、2025年の省エネ基準適合義務化と2030年度以降にZEH水準の省エネ性能確保を目指す方針です。
ここからは、2025年→2030年の順にポイントを整理します。
2025年の省エネ基準適合義務化で何が変わる?
2025年4月以降に着工する原則すべての住宅・建築物では、省エネ基準への適合が前提になります。
つまり「省エネに配慮した家」ではなく「省エネ基準を満たす家」がスタートラインになるということです。
意識しておきたいのは、設備を追加して帳尻を合わせるより、設計の早い段階から省エネ性能の確認が組み込まれる点です。
国交省の案内でも、適合確認のために従来の建築確認審査より時間を要する可能性があると示されています。
仕様決めを後半で一気に詰めると手戻りが起きやすくなるので、断熱・窓・換気など後から変えにくい部分は早めに方向性を固めておくと安心です。
2030年度以降「ZEH水準が標準へ」の意味
2030年度以降に新築される住宅については、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指すという政府目標が示されています。
ここでいう標準は、すべての家にZEHの認定ラベルが付くという意味ではありません。
イメージとしては、新築住宅の最低ラインがZEH水準へ近づいていくということです。
だからこそ、これから建てる家を「今の基準で十分」とだけ捉えると、数年後には平均より下に見えやすくなります。
住宅は簡単に買い替えられない分、基準が上がるタイミングほど最初の性能設計が効いてきます。
将来基準を意識すべき理由
将来の基準を意識しておくと、家づくりの判断がブレにくくなります。
理由は大きく3つです。
- 光熱費の変動に振り回されにくい
- 断熱や省エネ設備は、毎月の使う量そのものを減らす土台になるため、電気代が上下しても影響を受けにくくなります。
- 住み心地が安定する
- 性能が整っている家ほど暑さ寒さのストレスが減り、冷暖房の効きも読みやすくなります。
- 比較がしやすくなる
- これからは省エネ性能が当たり前に問われるので、どの水準の家かを言葉にできるだけで検討の軸がはっきりします。
ZEHの基準と種類を整理

ZEHは「太陽光を載せた省エネ住宅」というイメージで語られがちですが、実際は設計の順番がはっきりしています。
ここでは、まずZEHの合格ラインの基準を押さえたうえで、ZEH/Nearly ZEH/ZEH Orientedの違いを整理し、敷地条件に合わせた考え方のコツまでまとめます。
ZEH/Nearly ZEH/ZEH Orientedの違いと選び方
まず前提として、ZEHは再エネ等を除いて一次エネルギー消費量を20%以上削減し、太陽光発電などの導入で再エネ等を含めて100%以上削減を目指す考え方です。
戸建ZEHは、再生可能エネルギーの導入条件や削減率に応じて主に3つの区分に整理されています。
共通する土台は「断熱+省エネ」で、最後に創エネでどこまで補えるかが分かれ目です。
| 区分 | 省エネ(再エネ等除く) | 再エネ等を含む削減 | 主なイメージ | 向きやすいケース |
|---|---|---|---|---|
| ZEH | 20%以上削減 | 100%以上削減 | 省エネ+創エネで収支ゼロを狙う | 屋根条件が良く太陽光発電を設置しやすい |
| Nearly ZEH | 20%以上削減 | 75%以上100%未満 | 収支ゼロに近い状態を現実的に目指す | 日射・地域特性で100%に届きにくい |
| ZEH Oriented | 20%以上削減 | (創エネは前提にしない) | 断熱+省エネを重視 | 都市部狭小地などで太陽光発電を設置しにくい |
この整理をしておくと、太陽光を付けるかどうかではなく「どの区分で成り立たせるか」で考えられるようになります。
打ち合わせでも話の軸が揃いやすくなるため、判断がスムーズにできるでしょう。
GX志向型住宅(GX-ZEH)の要点

ZEHの次の流れとして、最近はつくるだけでなく「どう使うか(見える化・制御)」まで含めて家の性能を考える方向が強くなってきました。
その考え方のわかりやすい代表例が、国交省の「子育てグリーン住宅支援事業」で示されたGX志向型住宅の要件です。
戸建住宅の基準は立地条件によって一部異なります。
例えば一般地域では「断熱等級6以上」「再エネ除く一次エネ削減率35%以上」「再エネ込み100%以上」などが示され、寒冷地・低日射地域では再エネ込みの削減率が75%以上になる扱いです。
さらに、高度エネルギーマネジメント(ECHONET Lite AIF対応コントローラ等)の導入も要件に含まれます。
太陽光発電などの再生可能エネルギーの固定価格買取の期間は10年間なので、これからは「どれだけ売れるか」より「どれだけ家で使えるか」がポイントになります。
家づくりで見るZEHのメリット・デメリット

ZEHは、光熱費が下がるかどうかだけで判断すると見落としが増えてしまいます。
家は長く住むものなので、日々の快適さや将来のエネルギー環境の変化まで含めて見たほうが納得しやすいです。
ここでは、家づくり目線でメリットとデメリットを整理します。
メリット
ZEHのメリットは、節約の工夫よりも住まいの性能そのものによって実感しやすい点にあります。
断熱・省エネ・創エネを組み合わせることで、日々の負担を減らしながら暮らしを安定させやすくすることが可能です。
主なメリットをまとめてみましょう。
- 断熱+省エネ+創エネの組み合わせにより買うエネルギーを減らしやすい
- 光熱費が上がっても影響を受けにくく家計の見通しが立てやすい
- 室温のムラが減り冷暖房が効きやすくなる
- 太陽光発電に加えて蓄電池などを導入すると停電時の最低限の電力確保につながる
光熱費だけでなく「暑さ寒さのムラが減る」「家計の見通しが立ちやすい」「停電時の備えになる」といった形で、暮らしの安定にまとめて効きやすいところが利点です。
デメリット
ZEHは性能を積み上げる分、初期費用が上がりやすいのが現実です。
ただし、何を優先して整えるかで費用と納得感のバランスは取りやすくなります。
- 断熱・窓・高効率設備・太陽光発電などで建築費が上がりやすい
- 後から変えにくいのは外皮(断熱・窓)と気密・換気計画
- 太陽光発電・蓄電池・エネマネは段階的に検討しやすい
初期費用は増えやすいですが、外皮や換気計画のような後戻りしにくい部分を先に固め、太陽光や蓄電池は暮らし方や予算に合わせて選んでいくと、過不足の少ない仕様に落ち着きやすくなります。
ZEHに関するよくある質問
ZEHを検討する中でよく出てくる疑問をQ&A形式で整理します。
太陽光の考え方や区分の違い、補助金・BELSなど、打ち合わせ前に押さえておくと話がスムーズになるポイントをまとめました。
- 太陽光発電がないとZEHになりませんか?
-
ZEHは、太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入し、一次エネルギー収支を実質ゼロに近づける考え方です。
ただ、都市部などで太陽光の設置が難しいケースに配慮した区分としてZEH Orientedがあり、こちらは断熱・省エネ性能を高めることが中心になります。
まずは「どの区分のZEHを目指すのか」を揃えると話が早いです。
- 太陽光は載せたほうが得ですか?売電はまだ期待できますか?
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「得かどうか」は、載せる量だけでなく自家消費まで含めた使い方で変わります。
固定価格での買取が終わった後は、売る前提よりもつくった電気を家の中でどう活かすかが重要になりやすいです。
日中の在宅状況や給湯・家電の使い方まで含めて考えると判断しやすくなるでしょう。
- 補助金やBELSは、必ず取ったほうがいいですか?
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補助金は活用できれば助かりますが、年度によって要件が変わることがあります。
補助金を前提に仕様を決めてしまうと、途中で要件が合わなくなったり、当初予算の上限に達した場合に見直しが必要になりやすい点に注意が必要です。
BELSとは、Building-Housing Energy-efficiency Labeling System(建築物省エネルギー性能表示制度)の略称です。性能を見える化する手段として有効ですが、別途申請が必要になるため、事業者によって対応範囲が異なるので、早めに確認しておくと安心でしょう。
- ZEHで後悔しやすいポイントは?
-
後悔が出やすいのは、性能そのものより決め方の順番がズレたときです。
特に多いのは次の3つです。
- 区分の前提が曖昧:まず建築場所などに応じてZEH/Nearly/Orientedのうち、どのZEHを目指すことになるのかを先に明確しないと話がブレやすい
- 外皮より設備を先に決める:断熱・窓が固まらないまま進めると費用も快適性も不安定になりやすい
- 自家消費が暮らし方と不一致:日中の在宅や給湯・家電の使い方まで含めて設計するのがコツ
この3点を先に整理しておくと「付けるか付けないか」の二択ではなく、成立条件に沿って仕様をまとめやすくなります。
ZEH水準が標準になる前に家づくりのポイントを整理しよう!

ここまで、ZEHの基本的な考え方から、2025年の省エネ基準適合義務化と2030年度以降のZEH水準の流れ、ZEH/Nearly ZEH/ZEH Orientedの違い、さらにGX志向型住宅(GX-ZEH)の要点や補助金・BELSの注意点まで解説してきました。
最後に、家づくりで押さえておきたいポイントを整理します。
- ZEHは断熱を土台に一次エネルギー消費量を減らし再エネで不足分を補う考え方
- 2025年から省エネ基準適合が前提になり設計段階での確認が重要
- 2030年度以降はZEH水準が標準になる見込みであるため、将来基準を意識すると判断がブレにく
- GX志向型住宅は断熱・一次エネルギー削減率に加え、見える化・制御(エネマネ)まで含む流れ
- 補助金は有効だが要件が変わたり、申請前に予算が上限に達することもあるので制度頼みは避けると安全
迷ったときは「断熱と窓で土台を固める→太陽光は使い方まで考える」という順番に戻ると、検討が整理しやすくなります。
数字の良し悪しだけに引っぱられず、敷地条件や暮らし方まで含めて検討することが、ZEH時代のいちばん堅実な家づくりです。

