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【木村光行さん(大工)】憧れのおじさんに「大工になるな」と言われ それでも志した大工の道

2026 2/06
家づくりの担い手たち
2026年2月5日2026年2月6日
中山紀文

「大工の会」の発起人の木村建造(千葉県千葉市)の社長、木村光行さん。木村さんは「大工」のフリガナを増やしていきたい語る。

目次

大好きな大工のおじさんの「大工にはなるな」という教え

大工の息使いを間近に感じながら幼少期を過ごした木村さん。お祖父さんもお父さんも大工。東京都江戸川区にあった自宅には作業場があり、大工達の仕事ぶりを見ながら育ち、物心付いた頃には「大工になる」と決意したという。

その後、お父さんが独立したこともあり、厳しい家計の中でサッカーに夢中になっていった木村少年。この頃、自宅ではなく、お父さんが雇った山形県出身の大工のおじさんと寝食を共にしていたそうだ。

「食事は親の家でしたが、ほとんどの時間をおじさんと過ごしました。夕食後に一緒に居酒屋に行ったり、休みの日に釣りに行ったり、本当大好きでしたね」と木村さんは振り返る。しかし、そのおじさんから、「大工にはなるな」と繰り返し言われた。その発言の真意を聞いたことはないそうだ。現場に立つ者だからこそ、漠然と大工の未来に対する危機感を抱いていたのかもしれない。

少年から青年への階段を上りはじめた中学二年生の時、大好きだったおじさんが他界する。木村青年はおじさんのノミを譲り受けた。

進学校に進み大学を目指すという道もあったが、サッカー推薦により高校に進学した木村さん。大工になるという想いは揺らぐことなく、「高校でサッカーをやりきって、大工になろう」と考えていた。

高校から専門学校へと進学し、卒業後に父親のもとで大工の道を歩み始める。大工としての技術を磨き、お金持ちになる―。その想いを抱きながら、技術を磨き続けた。

コンビニのガラスに映った自分の姿 店舗分野で新しい経験

大工として一通りの仕事をこなせるようになった23歳の時。いつものように仕事帰りにコンビニに立ち寄った。ガラスに映る自分の姿を見た時、「絶望的な感覚に襲われた」という。髪はシルバーに染め、耳にはピアス。ニッカポッカの作業着を着た自分の姿に対する既視感。

専門学校生の時にバイトをしていた居酒屋で、仕事終わりに飲み来ていた作業員の姿とそっくりだったのだ。「その作業員の方々が悪いということではなく、自分が描いていた大工像とあまりにかけ離れていたのです。『大工になるな』というおじさんの言葉が蘇りました」。

木村さんは言う。「プレカット材で躯体を組み、既製品のパネルや床材を施工する。こうした仕事を一通りこなせるようになると、だいたいの現場は問題なくこなせるようになります。山を登り切った後、どうすればいいのか―。多くの大工がその時点で悩みはじめます。手刻みにこだわって技術を極めていくのであれば、なかなか山頂には到達できません。しかし、一般的な大工の場合、気が付くと山頂に到達してしまい、それ以降、技術が必ずしも金にならないことを痛感するのです」。

そこから木村さんの挑戦がはじまる。知り合いの居酒屋オーナーが、新しい店を出すと聞き、「日曜ならお金はいりません。手伝わせてください」と申し出た。店舗設計などやったことはなかったが、内装デザインも提案。そこから人脈がつながっていき、数多くの店舗設計と工事を請け負うようになる。

店舗を経営する人たちとの会話のなかで、営業の仕方や会話手法なども学んだ。その後、猛勉強し設計士の資格も取得。木村さんの仕事領域はどんどん広がっていく。

木村さんの場合、山頂に到達した姿を想像して絶望感に直面したことで、別の山に自ら橋をかけて違う山を目指しはじめたというわけだ。

CLT、大型パネルなど 自分なりに再び技術を磨く

木村さん、実は日本でCLT建築を初めて建てた大工でもある。国家プロジェクトに参画する形で、CLTの建築に携わった。

「大工は自分の手と道具を駆使して、材料を建物に仕立てていきます。ところがCLTは自分の手ではどうにもならない。どうやって施工する場所まで運び、ズレなどを修正していくのか。これまでの現場での経験や知識を生かしつつも、自分なりに考えながら施工していきました。そうした経験の中で、これも大工の役割なのだと感じました」。

大工のフリガナを増やす 技術さえあれば何をやってもいい

木村さんは、ステレオタイプの大工と一線を画す。そのことは木村さんが辿ってきた道程を見れば一目瞭然。

木村さんにとって大工とはどういう存在ですか―。そう問うと、「宮大工のように果てしなく技術を磨いていくのも大工だし、ICTを活用して新しい施工方法を見出そうというのも大工。大工の会では、それを知らせていきたい。絶望する必要はない。自分のように違う山を見つけてもいい。ただし、大工である以上、技術は習得しなくてはいけません。技術という『型』を習得したうえで、自分のように破ってもいいし、突き詰めてもいい。大工のフリガナを増やしていく。それが大工の会をやろうと思った一番の理由かもしれません」という答えが返ってきた。

高い志は人を自由にする―。大工の会の発足式で木村さんが語った言葉だ。なりたい職業のトップの座から陥落してしまった大工という職業。その楽しさや尊さを社会へ発信するのは、こうした型破り大工達なのかもしれない。

ちなみに、木村さんは人生の節目毎に、幼少期を共に過ごした、「大工になるな」と言われたおじさんの墓前に行くという。

取材協力:
木村建造株式会社 
Instagram:https://www.instagram.com/kimura.kenzo.2010
ホームページ:http://kimurakenzo.com

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